相続人以外に遺産を譲る方法
​遺 贈

身寄りがない方、あるいは、身寄りに遺産を譲りたくない方が、お亡くなりなった後、ご自分の預貯金や土地、家といった財産どうしようかというご相談を受けることが昨今多くなりました。

通常の相続手続きでは、内縁の妻や養子縁組をしていない人などの第三者に、財産を残すことはできません。
そこで、遺贈という仕組みを使うと、法定相続人ではない人にも大事な遺産を与えられることが可能になります。
 

遺贈とは

遺贈とは、遺言によって遺言者の財産を受遺者に無償で譲ることを言います。
遺贈の仕組みを使うと、内縁の夫や妻、法律上の親子関係がない家族の中でも、法定相続人ではない相手に財産を残せます。
また身寄りのいないお年寄りや、生涯独身を貫く人においては、介護で面倒を見てくれた良心的なヘルパーや、ボランティア、親しい友人などに遺贈を通して財産を譲るケースも増加傾向にあり、子どもの貧困や、子育て問題の課題解決などに取り組むNPO法人の中には、遺贈による寄付を受け付ける団体も多く存在しています。
そこで、財産を残したいと思える方がいらっしゃらない場合は、遺贈を使いこうした団体へ貯めたお金などを譲り、社会の役に立てようとお考えになる方もいらっしゃいます。

遺言による贈与は2種類

遺贈には、「包括遺贈」と「特定遺贈」があります。

「包括遺贈」とは、財産の全部あるいは一定の割合分を遺贈する方法のことです。

「私の財産をすべて〇〇に遺贈する」「私の財産の半分を〇〇に遺贈する」などと遺言書に記載します。受遺者(財産を受け取る人)は、相続人と同等の権利義務を負うことになります。

一方、「特定遺贈」とは、財産を特定して遺贈する方法のことです。

「東京都中央区築地5丁目〇〇の土地を△△に遺贈する」といった形で遺します。受遺者は、特別な指示がない限り、遺贈者(遺言を残して財産を贈る人)の債務を引き継ぎません。

 

遺贈のメリットとデメリット

メリット

<本当にゆずりたい相手を指定して財産を贈ることが可能>

相続では、原則、法定相続人にしか自分の財産を遺すことができません。しかし、遺贈であれば、たとえば孫や嫁など、法定相続人ではない親族や第三者にも財産をゆずることができます。

つまり、遺言者が本当にゆずりたい相手を指定して財産を贈ることができるのです。
また、生前にお世話になった人などを受遺者にすることで、自分の感謝の気持ちを伝えることができます。
遺贈は個人だけでなく団体、法人も受遺者にできるので、国や地方公共団体、その他支援団体などに遺贈することで、自分だけでは成し遂げられなかった理想や思いを実現することもできるのです。

もし、受遺者が受けとりたくない場合には放棄することができるので、一方的な押し付けになることもありません。
 

デメリット

<手続きが煩雑>

通常の遺贈では相続と同じく相続税がかかります。高額な相続税が負担となり、受遺者がやむをえず遺贈を放棄することにもなりかねません。

また、「遺留分」によるトラブルの恐れもあります。法定相続人には、法律で最低限相続できる割合がそれぞれの立場ごとに決められています。それが「遺留分」です。しかし包括遺贈によって全財産を特定の受遺者に贈るとされた場合、相続人は何も相続できなくなります。そのような場合には、遺留分を請求することができます。この請求を「遺留分侵害請求」といいます。

さらに、遺言書の書き方には一定のルールがあります。その遺言書のルールが守られておらず無効になると遺贈ができなくなることもあります。

ご自身で書類の収集、作成が難しく、手続きが困難な場合には弊事務所にご相談ください。

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不動産の遺贈は要注意

法人に不動産等を遺贈寄付する場合に、その不動産等に含み益があると、その含み益に課税されます。これを「みなし譲渡課税」といいます。不動産等の含み益部分について、所有権が移転した時点で、その含み益を精算するという考えです。不動産等を寄付しようと考えている方は、この「みなし譲渡課税」をどうするのかを事前に対策をしておく必要があります。

みなし譲渡課税の趣旨は、相続、遺贈の時までの年々の値上り益(キャピタルゲイン)は、被相続人に帰属するものであるから、資産が被相続人から離れるときには、その時点でキャピタルゲイン課税の清算をすべきであるというものです。また、資産を売却したうえで、その売却代金を寄付した場合と、課税上の違いをなくすということもあります。
 みなし譲渡に係る納税については、包括遺贈の場合であれば、包括受遺者は被相続人の財産、債務を承継しますので、不動産等の寄付を受けた受遺者(民間非営利団体)が納税義務者になります。
 特定遺贈の場合には、相続人がみなし譲渡に係る税額を原則として承継します。特定遺贈の場合には、不動産等の寄付を受けた民間非営利団体は所得税を負担せず、不動産等を取得していない相続人が、不動産等に係る所得税を全額負担することになるため、トラブルとなる可能性が高くなります。